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2005年07月29日
…■仁王の本棚 コーナー



「カイン―自分の弱さに悩むきみへ」
著:中島義道、発行:講談社
サラリーマンのオヤジが居酒屋に2,3人集まると、だいたい「近ごろの若い者は」論 に花が咲く。最近の話題は、とりわけ「金をかけて採用したのに三年ともたずに辞め ていく」件だ。下卑た笑い声をあげながら「わがままだから」「親が甘やかすから」 「他人の迷惑を考えないから」と結論を出しては、千鳥足で家に帰っていく。

しかし早々と会社から脱落していく新人を実際に見ると、そんな結論とはかけ離れた 人物像にびっくりさせられる。担当も新卒採用ホヤホヤで悩んでいる会社員と話す機 会がたまにある。「どうしてこの人はこんなにまじめなんだ」という人が多い。いわ く「技能を身に付けて期待に応えたい」「自己分析して適性を見つめなおしたい」…。 会社になじみ、まわりに迷惑をかけたくないからとがんばっている。内定をもらうま でにもさんざん自己分析本を読みふけり、企業にマッチするよう自分を矯正してきた というのに。いつまでも周りに合わせようと繊細な歯車をクルクルと回し続けている。 どこが「他人の迷惑を考えない」のだろう。いまだ自分を“直そう”と努力し続けて いる姿勢には頭が下がるばかりだ。そしてなお会社に貢献しようと、勇気をふりしぼっ て意見を述べたりもする。

でも、そんな努力に意味はあるんだろうか。いまさらの指摘だけれど、新卒採用する 会社は必ずしも技能に溢れた優秀な人材を期待しているわけじゃない。「このままで は会社が!」なんてことを“そもそも発想すらせず”、会社色に染まってくれる人を 求めているところさえある。あえて技能を身に付けようとすれば「わがまま」と呼ば れ、意見すれば「他人の迷惑を考えない」と評価されることだってある。あなたが会 社になじもうと報われない努力をしている一方で、会社色に染まり積極的にはスキル も身に付けようとしていない人たちがどんどん前に進んでゆく…。意見も取り入れら れていく。世の中は不条理だから。そんな事例は枚挙に暇がない。あなたは無力さを 感じて傷ついていくばかり…。

「カイン―自分の弱さに悩むきみへ」では、そんなあなたをカインにたとえている。 聖書に出てくる、神に捧げ物をしたカインとアベルの片割れだ。神はアベルばかりを かわいがりカインには見向きもしない。傷つき嫉妬に狂ったカインはアベルを刺し、 その罪を責められ荒野に追放される。あなたも同じだ。アベルのようになりたいと切 に願ってもカインはカインのまま。やがて破綻し、責め苦を負わされて追放されるの がオチだろう。ムリをしても意味がない。かわりにカインはカインのままで生きよう。 そうこの本は言う。

手始めに周りに迷惑をかけることからはじめよう。居酒屋のオヤジを挙げるまでもな く、自分こそスキルが足りているかどうか、他人に迷惑をかけていないかに無自覚な 人々は多い。少なくとも自分の無能を自覚できるほど賢いあなただけが、能力を気に 病む必要はない。技量不足を知りながら雇ったあなたをそのまま放置するなら、それ は雇った会社にだって責任があるのだ。そして不条理や怒りを感じたら率直に会社に ぶつければいい。会社に理解してもらうためじゃない(どだい人が人を理解すること は不可能だ)。怒りを自分の中に溜めないために。抑え込んだ攻撃性は自分自身へと 向かうものだ…。自傷を繰り返していれば三年ももつわけがない。どんどん外へ迷惑 をかけ、怒りをぶつけよう。けして器用な生き方とは言えないけれど、あなたは今よ りずっと楽になるはずだ。それでも限界が来たら…転職するという道もある。それは 逃げ道ではないよ。


(三年どころか1ヶ月もたなかったことがある担当・Bar)


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