IT企業による放送会社買収騒ぎのとき、つかのま話題になったのが「会
社は誰のものか」という問いでした。「会社は株主の利益のためにある
のだから株主のものだ」「いや、消費者=社会の利益を考えて動くべき
だ」と各論噴出したものです。…あなたは、会社は誰のものだと思いま
すか?
いま転職を志しているあなた。もしかして「会社は社員のものだ」と答
えたのではないでしょうか。それは裏を返せば「社員ひとりひとりが会
社は“自分のものだ”という意識をもち、高める努力をすべきだ」とい
う意味なのでしょうね。とても立派な見識です。おそらく、あなたは毎
日残業をして、両肩に責任を背負ってがんばっているのでは? まじめ
ないい人ですね。でも、あえて言いましょう。それは間違いです。
まず、商法上から言えば株式会社は「株主のもの」です。社員は経営責
任をもつ幹部の命令どおりに動く存在でしかありません。また、有限会
社は「社員のもの」と定義されていますが、この場合の「社員」は出資
者を指します。単なる従業員は無関係です。杓子定規ですが事実はこの
とおり。社員は会社の持ち主ではなく、(基本的には)経営方針を決め
る権利もありません。語弊をおそれず言えば「単なる道具」です。
まじめなあなたは反論したがるかもしれません。でも、逆に考えてみる
のも大事ですよ。会社があなたのものでないなら、こう考えることもで
きます。あなたが心身ともに疲弊するまでにがんばっても会社がよくな
らないのなら、それはあなたの責任ではない、と。会社のほんとうの持
ち主、また経営者が執るべき舵を執っていないのではないか、と。また
「あなたのもの」じゃないなら「あなたの思うよう」にすぐには変わら
ない、高まらないのも道理だ、と。
「会社は社員のもの」と答えたあなたは、きっと毎日とても疲れている
はずです。負わなくていい責任を自分で背負い込んでいるのですから。
つらくて、おまけに達成感も得られません。新卒入社して早々に首をう
なだれて辞めていく方や、転職してもなかなかなじめない方々の少なく
ない部分が、こういう「まじめ→挫折」型です。まじめなことは悪いこ
とではありません。だけど自分を大切にすることはもっと大事ですよ。
転職を成功させるコツでもあります。なにより、あなたという人材が健
康でいてくれることが会社にとっては好ましいはずだというのを忘れず
に。
インテージのオンライン調査(2005年)によると「会社は社員のもの」
という方が回答者の3割もいたそうです。もう少し、まじめを休んでも
いい気がしますね。
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